目次
序章:極端な男の、次なる欲望
僕の親友、ポコさんとのキャンプは、いつも予測不能なハプニングの連続です。
前回のキャンプでは「自立式ハンモック泊」に挑戦し、GWだというのに寒さ対策を怠り、山の夜の冷え込みに敗北。 「寒くて一睡もできなかった…」と、翌朝焚き火の前で小さくなっていたのは、まだ記憶に新しいところ。
しかし、彼の思考回路は常に0か100。
「普通」や「適度」という概念が存在しません。
極端から極端へと、巨大な振り子のように振り切れます。
「ハンモックで凍えた」→「じゃあ、次はちょっと良い寝袋を買おう」
…とは、ならないのがポコさん。
「ハンモックで凍えた」→「ならば、燃え盛る地獄のような暖かさを手に入れればいい」
と、なるのです。
中途半端な暖かさでは満足できない。
彼が求めたのは、「圧倒的な暖かさ」。
ただ、それだけだったのです。
この彼の極端すぎる目標が、またしても僕たちを新たな悲劇(いや、喜劇か?)へと導くことになります。
体験談(本編):灼熱地獄と10フレームの悲劇
怪物、現る。DIYオイル缶(ペール缶)ストーブ
僕たちは愛知県豊田市にある、いきつけのキャンプ場、「アウトドアガーデンいなぶ」に向かいました。
そしてキャンプ当日。
ポコさんが「ななかふぇさん、これだよ。ネットで見て作ったオリジナル焚き火台!」と、自信満々に披露した新しい秘密兵器。
それは、なんと20リットルの巨大なオイル缶(ペール缶)を改造した、手作りのストーブでした。
彼いわく「DIY焚き火台」です。
彼の体の大きさによく似合うバカでかい焚き火台です。
ペール缶に空気穴を開けて煙突効果を高める工夫がしてあります。
その燃焼効率は驚くほど高く、火をつけると「ゴォォォ!!」という轟音と共に火柱が上がり、あっという間に周囲は灼熱地獄と化しました。

(うわ、熱っ!てか、火柱ヤバすぎだろ…)
(顔がヒリヒリする…)
冬の寒さなど微塵も感じさせないほどの暖かさだったことは間違いありません。
むしろ、熱すぎてイスをかなり後ろに下げないと座っていられないほど。
焚き火台はウインドスクリーンで囲われており、その反射熱でポコさんは寒さを感じることはなかったようです。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
薪はまるで紙のように燃え尽き、ゴウゴウと燃え盛る炎は、火力調節など夢のまた夢。
とてもじゃないですが、この「DIY焚き火台」の上で、繊細な料理をすることなど不可能です。
(肉を置いた瞬間、3秒で炭になるでしょう)
僕から見れば、ただ薪を浪費するだけの「クソデカ焚き火台」、デメリットだらけの代物。
しかし、ポコさんはこの怪物のようなストーブをいたく気に入った様子でした。
「ななかふぇさん、これ、めちゃくちゃ暖かいわ…」
そう言って、一人だけ遠赤外線で顔を真っ赤にしながら、彼は満足げに微笑んでいました。
彼にとっては、「めちゃくちゃ暖かい」というたった一点の長所が、他の全ての欠点(燃費最悪、調理不可、火の粉ヤバい)を補って余りある最高の価値だったのでしょう。
その結果、彼はこの「暖を取るためだけ」の巨大なペール缶の隣に、調理用の別の小さな焚き火台を置くという、なんともアンバランスなスタイルでその夜を過ごすことになったのです。

熱い網と、避けられない10フレームの悲劇
夕食の準備のため、ポコさんが調理用の焚き火台の上で取り出したのは、ガスバーナーと、ある「網」でした。
「バーナーパッド」です。
シングルバーナーの五徳の上に敷き、火を均一に広げるための道具ですね。

彼は、そのバーナーパッドの上で、お湯を沸かしていた。
調理も終盤に差し掛かり、あたりには、美味しそうな匂いが漂っていた、その時でした。
「あっつ!!!!」
静かなキャンプ場に、ポコさんの悲痛な叫び声が突然響き渡りました。
何事かと慌てて彼の方を見ると、彼は指を握りしめ、顔を歪めて痛みに耐えています。
どうやら彼は、熱を帯びていたそのバーナーパッドを、反射的に素手で掴んでしまったらしい。
バーナーパッドは見た目で熱くなっているかどうか判断が難しいのです。
火から下ろした直後でも、メッシュ状の見た目から「もう冷めたかな?」と錯覚してしまう。
ポコさんも、まさにその罠にハマったのです。
【導線①】火傷の応急処置と、危険な「罠」
僕はすぐに彼を炊き場に連れて行き、冷水で10分以上冷やし、持っていた保冷剤を渡して応急処置をしました。
幸い、大事には至りませんでしたが、指先は真っ赤になっていました。
この「バーナーパッド」、確かに弱火を安定させる便利アイテムなんですが、『見た目以上に熱を溜め込む』のが本当に厄介なんです…。
メッシュ状なので、火から下ろすとしすぐに冷めるように見えてしまう。
これが、ポコさんがハマった「罠」でした。
そして、落ち込む彼に、僕だからこそ言える最高の慰めの言葉をかけたのです。
「ポコさん、大丈夫。僕もやったことあるよ、それ」
「それ、格闘ゲームで言うところの『10フレーム』みたいなもんで、見てから反応できないんだよね」と。
格闘ゲームが好きなポコさんは、そのマニアックな例えの意味をすぐに理解し、少しだけ心が救われたようでした。
※格ゲーマーじゃない読者のために、僕から補足させてください(笑)
格闘ゲームを知らない方に説明すると、「1フレーム」は、「60分の1秒」のこと。
つまり、「10フレーム」というのは、およそ【0.17秒】という、人間の反射神経では、どうしようもない時間なのです。
「熱い!」と脳が認識するより先に、指が対象物に触れてしまっている。
「熱い!と気づいた時には、もう、指が、鉄板にくっついている状態」。だから、ポコさんが、手を離せなかったのは、当たり前のことだったのです。
(運動神経とか、ドジとか、そういう問題ではないのです、たぶん…)
教訓:DIYの暴走と「見えない熱」
極端な暖かさを求めたDIYペール缶ストーブ。
その結果、燃費が悪すぎて調理ができなくなり、別の調理器具(バーナーパッド)を使った結果、火傷するという痛い代償。
ポコさんのキャンプはいつも何かが起こります。
今回の失敗談から、僕たちが学ぶべき教訓は2つです。
- DIY焚き火台は「ロマン」だが「リスク」
ポコさんのDIYペール缶ストーブは、確かに暖かかった。
しかし、燃焼効率が激しすぎ(=薪の消費がヤバい)、火力の調整が一切できないという欠陥品でした。
自作(DIY)は楽しいですが、火を扱う道具は安全性が第一。市販品がいかに優れているか(燃費、安全性、調理のしやすさ)を痛感しましたね。 - バーナーパッドは「冷めるまで触るな」
今回の最大の悲劇。
バーナーパッドや、鉄製の網、スキレットなどは、火から下ろしても、見た目以上に熱を蓄えています。
「これくらい大丈夫だろ」という油断が、ポコさんのような「10フレームの悲劇」を生みます。
キャンプでの火傷は、応急処置が遅れると大惨事になります。必ず革手袋を使うか、完全に冷めるまで放置しましょう。
おすすめ商品
今回のポコさんの「灼熱地獄」と「火傷」の失敗を踏まえ、安全にキャンプを楽しむためのアイテムを厳選しました。
1.【火傷対策】バーナーパッド(※取り扱い注意!)
ポコさんが火傷した、この「バーナーパッド」。
誤解しないでほしいのですが、道具としては非常に優秀です。
ガスバーナーの強すぎる火を、柔らかい「赤外線」の熱に変えてくれるので、弱火料理や炊飯がめちゃくちゃ安定します。
ただし、教訓の通り、**「冷めるまで絶対に素手で触らない」**こと。これを守れば最強の調理器具です。あの「10フレームの悲劇」を繰り返さないためにも。
2.【安全なペール缶】LIFTOFF ロケットストーブ 『焚火缶』
「ポコさんのDIYペール缶ストーブ、ちょっと面白そう…」
そう思った、そこのあなた(笑)
どうせなら、安全で、燃焼効率が計算され尽くされた「市販品」を使いましょう。
この「焚火缶」は、ペール缶に乗せるだけで、煙が少なく、高火力を生み出すロケットストーブになる優れモノ。ペール缶もセットで付いてくるのですぐに焚き火が楽しめます。
ポコさんのDIYと違って、ちゃんと「調理」にも使えるし、何より安全です。
3.【熱対策】焚き火台 ウインドスクリーン(風防)
ポコさんのDIYペール缶でも使用していましたが、普通の焚き火台は「風」に弱く、火力が安定しません。
また、強すぎる火の「熱」から、他のギアを守る必要もあります。
こういう「ウインドスクリーン(風防)」で焚き火台を囲うだけで、熱効率が格段にアップし、薪の節約にもなります。
ポコさんの灼熱ストーブの熱から、他の道具を守る「反射板」としても使えますね。
まとめ:失敗を、笑いに変える、友情
極端な暖かさを求めたDIYペール缶ストーブ。
その結果、調理が不便になり、その不便さが火傷という痛い代償を生んでしまいました。
ポコさんのキャンプはいつも何かが起こります。
でも、最後には僕たちの間で笑い話に変わってしまう。
それこそが、僕とポコさんのキャンプの醍醐味なのかもしれません。
彼の常識の斜め上を行く発想と、それを上回るドジは、僕たちのキャンプの何よりも面白いスパイスなのです。
今回もまた、笑いと少しの教訓(?)を胸に、僕たちは次のキャンプへと向かうのです。
▼実際のキャンプの様子を紹介


ななかふぇより:記事の感想(学びのコメント)
オイル缶ストーブは確かに暖かかったですが、燃費の悪さや調理のしづらさ、そして火傷のリスク…問題点は山ほどありました。
それでも、失敗しても笑い飛ばせるポコさんの姿には、不思議と学びがあります。
今でもそのペール缶はポコさんのお気に入りの焚き火台として使っています。
読者の皆さん、キャンプは自然相手だからこそ「安全第一」であるべきです。
火の扱いひとつで楽しい思い出が危険に変わることもあります。
(バーナーパッドの火傷、本当に痛そうでした…)
でも同時に、失敗を恐れず挑戦することでしか見えない景色もあるのかもしれません。
ポコさんのように「暖かさ」という一点突破を目指す純粋さも、ある意味、眩しい。
――「安全を守りつつ、失敗を笑いに変える」。
これが、ポコさんから学べる一番の教訓なのだと思います。
▼ポコさんの「すべて」を知る(プロフィール)
▼次のキャンプ失敗談(第6話)はこちら









