はじめに:嵐の夜、男はひとりで立ち向かった
冬のキャンプは、静かで、空気が澄んでいて、最高だ。 だが、それは「天候に恵まれれば」の話。
冬のキャンプは、時として牙をむく。 特に、「風」という、目に見えない最大の敵が。
前回、ポコさんは冬キャンプで泥酔し、焚き火の前で寝落ち。 僕が介抱しなければ、低体温症で冗談抜きに危険な状態でした。
▼前回のエピソードはコチラ
あの時の僕の忠告を、彼はどう聞いていたのか。
あの事件から数週間が経った、2025年2月。
ポコさんは、時として自ら嵐の中に飛び込んでいくような、無謀な挑戦をすることがあります。
季節は真冬の2月。
場所は、吹きっかららしの海辺のキャンプ場、愛知県美浜町にある「浜オートキャンプ場」。
そして、天気予報は風速7メートルを超える大荒れの予報。
そんな、全ての死亡フラグが完璧に揃った日に、ポコさんが記念すべき「初ソロキャンプ」に挑もうとしていました。
そう、一人きりの、ソロキャンプです。
隣に、介抱したり、忠告したり、危険を教えたりする僕(ななかふぇ)は、いない。
彼が頼れるのは、彼自身の「俺流」の知識と技術だけ。
これは、「ソロキャンプ」という最も「危険」な状況で、「強風」という最悪の敵に立ち向かった、一人の無謀な男の挑戦の記録です。
浜オートキャンプ場
【HP】 https://n8qt1.crayonsite.net/
【GoogleMap】 https://maps.app.goo.gl/LN3B1XVpsyMFuUnYA
目次
賢者の忠告と、愚者の楽観【強風キャンプ失敗談の始まり】
「ポコさん、その日の浜キャンプ、風ヤバいよ?」
「風速7mって、テントのポール折れるレベルだよ?」
強風の中でのキャンプがどれだけ危険か。
テントはまともに張れない。
焚き火は火の粉が舞って火事になる。
夜はテントが風で叩きつけられる音で、一睡もできない。
僕は、経験上それをよく知っていました。
僕は彼に、LINEで何度も忠告しました。
「強風のキャンプは、本当に大変だよ?」
「初心者のソロキャンプで、しかも強風とか、難易度高すぎるって」
「延期したほうがいいよ、マジで」
しかし、彼はそれを軽く聞き流し、
「大丈夫、大丈夫、なんとかなるでしょw」
と、いつものスタンス一つで言い張ります。
「俺、どうしてもキャンプ行きたいねん」
彼の「キャンプに行きたい」という5歳の暴君の欲望が、僕(20歳の理性)の忠告を、いとも簡単に弾き返してしまいました。
その時、僕の心の中に、ちょっぴり意地悪な「観察者」としての視点が芽生えたのを、正直に告白します。
(まあ、彼が自己責任で大変な目に遭うのも…)
(それはそれで、面白いエピソード(ネタ)になるかもしれないな…)
そう、僕は彼の安全を祈る「親友」であると同時に、彼の「しくじり」を待望する「観察者」でもあるのです。
(がんばれポコさん、盛大にフラグを回収するんだ…!)
僕は、彼の無事を祈るフリをしながら、LINEを閉じたのでした。
▼当日の天気予報。時間をずらして保存しているので多少のズレはご容赦を。


風と炎と、穴の開いたテント【キャンプ中のアクシデント】
キャンプ当日。
僕が天気予報をチェックすると、案の定、現地は予報を上回る「風速10メートル」近い暴風が吹き荒れていました。
「風速10m」は、台風中継レベルです。
傘は一瞬でひっくり返り、立っているのもやっとなレベル。
常識的に考えれば、即Uターンして中止一択の状況です。
しかし、ポコさんは違いました。
彼は、決行しました。
キャンプ場に到着し、車から降りた瞬間、
「ゴォォォー!!」
という、海からの湿った強風に体をよろめかせながらも、「キャンプをしたい」という子供のような純粋な欲望が、全ての理性を上回ったのです。
初めてのソロキャンプということもあり、彼のテンションは最高潮。
僕のLINEには、キャンプ場の様子や、調理風景の画像が次々とアップされていきます。
(このマメさが、彼の憎めないところだ)
「ななかふぇさん、風ヤバいw でも楽しい!」
その中には、あの伝説の「手作り巨大オイル缶ストーブ」でチキンを焼いている写真もありました。
(改良をして火の調節ができるようになったようです。)
▼伝説のオイル缶ストーブも登場。嵐の中でも楽しそうです。


そして夜。
少しだけ風が収まった(ように見えた)隙に、彼が念願の焚き火を始めた、その束の間の平和な時間。
しかし、その平和を切り裂くように、
ビュゴォォォ!!!
という、一段と強い突風が吹き、
あの「オイル缶ストーブ」の炎が、龍のように渦を巻き、
燃え盛る薪の破片(=火の粉)が、夜空に舞い上がりました。
そして、その灼熱の火の粉が、風下に設置していた、彼のお気に入りの「黒いテント」に襲いかかったのです。
ジュッ…
ジュッ、ジュッ…!
ポコさんが気づいた時には、すでに遅く。
彼の大事なテントには、無数の「穴」が開いていました。
悲劇の瞬間でした。
強風キャンプの火の粉対策
ポコさんは、あとでこう言っていました。
「風が強すぎて、火の粉がどこに飛ぶか全然わからんかった」と。
当たり前です。
強風の日の焚き火は、火の粉が数十メートル飛ぶこともあります。
テントのすぐそばで、しかもあのDIYストーブを使うなんて、自殺行為でした。
せめて、テントと焚き火の間に、火の粉から守る「防炎タープ」を張るか、焚き火のそばにいる間は、燃えにくい「難燃ブランケット」をテントに被せておくべきでした。
(いや、それ以前に、焚き火を諦めるべきでしたが…)
「あー…お気に入りのテントに穴が…」
ポコさんは、火の粉で穴が開いたテントを見て、さすがに落ち込んだようです。
(だが、まだ彼の本当の試練は、ここからだった)
強風キャンプで学んだ3つの教訓(という名の地獄)
テントに穴が開き、意気消沈したポコさん。
焚き火も早々に諦め、彼は寝床のテントに入りました。
時刻は、まだ夜の10時。
しかし、風は収まる様子はありません。
それどころか、夜が更けるにつれ、
「ヒュゥゥゥー!ゴォォォー!」
と、海風はさらに勢いを増していきます。
テントが、バタバタバタッ!と、今にも引き裂かれそうな音を立てる。
ポールが、ミシミシ…と、ありえない角度にしなっている。
彼は、ヒヤヒヤしながら、眠ろうとしました。
しかし、眠れるわけがない。
(これ、テント飛んでいくんじゃね…?)
教訓1:テント設営は「風向き」と「ガイロープ」が命
ここで、ポコさんの致命的な「しくじり」が発覚します。
彼は、テントを補強するための「ガイロープ」を、一本も張っていなかったのです。
※ガイロープとは、テントやタープを地面に(ペグで)固定し、風の力を逃がすための、命綱となるロープのことです。別名「張り綱」とも呼ばれ、テントやタープの設営に欠かせない、最重要アイテムです。
強風の日のキャンプ設営は、
まず「風向き」を読み、テントの入口を風下に向け、
そして「ガイロープ」を全ての箇所で、しっかりとペグダウンする。
これが鉄則中の鉄則です。
しかし、楽観主義のポコさんは、それを知らなかった(あるいは、面倒くさかった)。
彼が頼れるのは、地面に刺さった数本の貧弱なペグのみです。
教訓2:強風予報の日は「中止も勇気」
風でテントがバタバタと叩きつけられる轟音の中、彼は思います。
(まあ、テントが飛んでいくなんて最悪の事態にはならんから、大丈夫やろ…)
彼は、お得意のスキルを発動させます。
危機が迫ると「自分は大丈夫」と思い込むことで自分を安心させる「正常性バイアス」。
「これくらい、まだ大丈夫」
「朝には止んでるはず」
非常時に最も危険なその思考回路で、彼はその夜を乗り切ろうとしたのです。
しかし、テントが風で煽られ、バタタタとうるさくて、結局ほとんど眠れなかったようです。
(むしろ、うるさくて眠れなかったおかげで、テントが崩壊する瞬間に対応できたのかもしれませんが…)
そもそも、風速7m以上の予報が出ている時点で、「中止する」という勇気ある決断こそが、賢者の選択だったのです。
教訓3:焚き火と風の相性は最悪(火の粉対策を)
そして、彼が朝になって気づいた、もう一つの悲劇。
それは、テントに開いた「火の粉による穴」。
冬のキャンプで焚き火がしたい気持ちは、痛いほどわかります。
しかし、強風と焚き火の相性は、最悪です。
火は、風で安定しない。
薪は、異常な速度で消費される。
そして何より、火の粉がどこに飛ぶか予測不能になる。
ポコさんのように、テントや車、あるいは隣のサイトに火の粉が飛んで、穴を開けたり、最悪の場合、火事を引き起こします。
強風の日は、焚き火を諦める。
これもまた、「中止する勇気」と同じくらい、重要な決断なのです。
【おすすめ対策】強風キャンプで役立つギア3選
今回のポコさんの「ソロキャンプ強風失敗談」は、本当に笑い事では済まない、危険なものでした。
彼から学んだ教訓をもとに、あなたの命と財産(テント)を守るための、必須ギアを紹介します。
1.【命を守る】風に強いテント(ドーム型・ジオデシック構造)
ポコさんのテントが(穴は開いたものの)崩壊しなかったのは、彼がたまたま風を受け流しやすい「ドーム型」を使っていたという奇跡のおかげです。
しかし、ガイロープを張らなければ、ドーム型でも危険です。
強風の日にキャンプをするなら、風に強いテントが必須です。
「ワンポールテント」は円錐形のフォルムが風をキレイに受け流す構造になっており、正しくガイロープを張れば、非常に高い耐風性を発揮します。
僕もワンポールテントを使っているので、ななかふぇもワンポールテントをオススメします。
また、バイク乗りなどが使う「ツーリングドーム」もおすすめです。
これらは背が低く、フレーム構造がしっかりしているため、風の影響を受けにくく、ソロキャンプや悪天候時には非常に頼りになります。
自分の命を預けるテント選びこそ、最重要です。
2.【命を守る&設営を楽に】テント固定ギア4選
① 強靭な「ペグ」と「ガイロープ」
ポコさんが張るのをサボった「ガイロープ」。
これを張るか張らないかで、テントの耐風性は天と地ほど変わります。
テントに付属している貧弱なペグやロープでは、強風には耐えられません。
地面に30cm以上打ち込める、頑丈な「鍛造ペグ」と、しっかりとテンションが張れる「丈夫なガイロープ」を、別途用意しておくこと。
これが、あなたのテントが飛ばされないための、最低限の「保険」です。
②【設営が超カンタンに】三角カラビナ
ポコさんのように設営が面倒な人(僕もですが)に、超おすすめなのがこの「三角カラビナ」です。
タープやテントの張り綱(ガイロープ)の設営が、これがあるだけで劇的にカンタンになります。
頑丈で安心感のある作りで、三角形が安定しているのが特徴。
とにかく使いやすく、ロープ掛けやピン張りが本当に楽になります。
サイズ感もバッチリで、品質が良いとキャンパー界隈でも好評です。
タープのハトメ部分などにこれを通しておくだけで、ロープの取り外しが一瞬。
価格面でも満足度が高く、コストパフォーマンスに優れています。
キャンプやテントの吊り下げなど、様々な用途に使える万能アイテムです。
③【ロープ調整の必需品】自在金具(2つ穴タイプ)
ガイロープとセットで必須なのが、この「自在金具」です。
ロープの長さを簡単に調節して、テントやタープにテンション(張り)をかけるための重要パーツ。
ポコさんがガイロープを張らなかったのも、「ロープワークが面倒だった」からに違いありません。
でも、この自在金具があれば、ロープの扱いに不慣れな方でも、誰でも簡単にロープをピンと張ることができます。
優れたアルミニウム合金製で軽量、頑丈で丈夫なので変形してしまう心配がなく、耐食性にも優れているのでサビにも強い。
機能的なデザインでバリ取り済みなのですぐにお使いいただけます。バリによるロープの擦れなどが少なく、ロープの劣化を抑えられます。
ロープ穴は5mmあるので細いロープから太いロープまで対応可能。
強い風などでロープがたるんでしまった際にもすぐに調整することができます。
色々自在金具は使ってきましたが、このシンプルな「二つ穴タイプ」が一番使いやすかったですね。
便利なワイヤーリング付きのものなら、自在金具を一つにまとめることが可能。
持ち運びに便利でカバンに付けることで紛失も防げます。軽量でコンパクトなサイズなのでソロキャンプや登山にも最適です。
3.【火の粉対策】難燃ブランケット&防炎タープ
「それでも強風で焚き火がしたい!」という、ポコさんのような(懲りない)人のために。
せめて、テントやギアを火の粉から守る「防炎タープ」や「難燃ブランケット」を使いましょう。
焚き火台とテントの間に「防炎タープ」を陣幕のように張るだけで、火の粉をブロックできます。
また、燃えやすい化繊のテントに、綿やT/C素材(難燃性)の「ブランケット」を被せておくだけでも、ポコさんのような「テント穴あき悲劇」は防げます。
【結末】それでもキャンプがやめられない理由
そして翌朝。
強風は、まだ止んでいませんでした。
しかし、ポコさんの心は、初めてのソロキャンプを(ギリギリ)生き残った、謎の達成感で満たされていました。
テントに穴が開き、
一睡もできず、
自然の猛威にただただ翻弄されただけの一夜。
しかし、物語の最後、彼はこう締めくくったのです。
(僕のLINEに、朝日の写真と共に送られてきました)
美しい海岸に浮かぶ朝日を眺めながら、彼が朝食に選んだのは、「赤いきつね(デカ盛り)」。
(朝からよく食う男だ…)
▼嵐の後の朝日に照らされながら、赤いきつね(デカ盛り)を食す。


そして、そこには、こう書き添えられていました。
「風ヤバかったけど、キャンプは楽しかったから、また行きたいなぁ」と。
……コイツ、メンタル強すぎだろ。
(というか、何も学んでいないだけかもしれない)
彼の、その常人には理解不能な「鋼のメンタル」。
どんな逆境や失敗も、彼の「楽しい」という感情の前では、無力化されてしまうのです。
その、あまりにもポジティブすぎる魂こそが、彼を最高の「喜劇役者」にしているのだと、僕は嵐の後の朝焼けの写真を見ながら、改めて思いました。

ななかふぇより:記事の感想(学びのコメント)
彼のこの懲りない心には、呆れるのを通り越して、もはや尊敬の念すら抱いてしまいます(笑)。
テントに穴が開いて、寝不足なのに、「楽しかった」で終われる。
これは、もはや一種の「才能」です。
でも一つだけ言えるのは、彼のこのどうしようもない明るさが、僕たちの友情を(ギリギリ)支えているということなのかもしれませんね。
「さすがポコさんやなぁ…」
こんなセリフを、僕は、この先も何度も呟いていくことになるのでしょう(笑)
読者の皆さんは、絶対に真似しないでくださいね!
強風の日のキャンプは、本当に危険です!
▼ポコさんの「すべて」を知る(プロフィール)
▼▼次のキャンプ失敗談(第8話)はこちら













