「祭りは、終わるからこそ美しい」 「引き際を知るのが、大人の嗜みだ」
そんな綺麗事を言う賢者たちを尻目に、 一人の愚者が、ボロボロの翼で再び空を飛びました。
これは、キャバレー花園で開催された 水着イベント「夏祭り」に全財産と全精力を注ぎ込んだ、 友人ポコさん(アラフォー)の、 あまりにも人間臭い「伝説の3日目(最終日)」の記録です。
初日の嫉妬、2日目の同人AV女優との遭遇。 そして迎えた最終日、彼を待っていたのは、 「塩粥生活」への片道切符と、 哀愁漂う「赤ウインナー」の味でした。
3日間で彼が失ったもの、そして得たものとは? 欲望のピーターパン、覚醒の最終章です。
彼の生き様を見ていると、僕の悩みなんてちっぽけに思えてきます
目次
狂気と正気の狭間で(最終日の朝)
物語は、あの「餃子の王将」での暴食から数時間後、 水着イベント最終日の朝から始まります。
2日連続の深酒と、深夜の炭水化物爆弾。 アラフォーの肉体は悲鳴を上げているはずです。 普通なら、「もう酒も見たくない」「家で寝ていたい」と思うのが正常な反応でしょう。
しかし、その日の朝、 僕たちのグループLINEに届いた通知は、 そんな常識を嘲笑うかのようなものでした。
「昨日が幸せすぎて、今日(仕事)が辛い…」
それは、出勤前の彼から届いた、あまりにも正直な悲鳴でした。 二日酔いの頭痛、重い体、そして現実(仕事)への拒絶反応。
しかし、このメッセージの裏には、 恐るべき「前提」が隠されていました。
彼は「辛いから今日は行かない」と言っているのではないのです。 「辛いからこそ、今夜も花園で癒やされなければならない」 と、脳内変換されているのです。
起きた瞬間から、彼の心はすでに名古屋・今池へと飛んでいました。 仕事のストレスも、肉体の疲労も、 すべては今夜の「みりあちゃん(推し)」との再会へのスパイスに過ぎないのです。
有終の美と、塩粥の誓い
夕方、仕事終わりの僕のスマホが震えました。 僕は半ば確信を持ちながら、彼にLINEを送ります。
「今日も元気に花園に行くの?」
すぐに「既読」が付きました。 そして返ってきたのは、迷いの一切ない、力強い一言でした。
「向かってるで」
……やはり。 彼は止まりません。ブレーキが壊れたダンプカーのように、 欲望の聖地へと直走っています。
そして続けて送られてきたメッセージに、僕は目を疑いました。
「最終日はもちろん、みりあちゃんで有終の美を飾るで!」 「その代わり、次の給料日まで具なしの塩粥(しおがゆ)生活や!」
「塩粥」。 戦時中か、あるいは修行僧か。 現代日本において、自らの意志で「明日から塩粥」を選択する人間が、 果たしてどれだけいるでしょうか。
その、あまりにも悲壮で、極端で、そして滑稽な覚悟。
ポコさんは、明日からの1ヶ月の食費、 いや、生活に必要なあらゆるコストを犠牲にして、 その全てを今夜のキャバレー花園に注ぎ込もうとしているのです。
「今日という日さえ良ければ、明日は野垂れ死んでも構わない」 そんな、どうしようもない決意。
僕は呆れを通り越して、感動すら覚えました。 そして、彼のその「未来を捨てたピーターパン精神」に敬意を表し、 最後の一押し(悪魔のささやき)をすることにしました。
「素晴らしい覚悟だ。 今日で最後のイベントなんだから、ケチケチせずに3セット(240分)位楽しもうぜ。 後の事はその時考えれば大丈夫。 一番の罪は、後で『もっと遊べばよかった』と後悔することだ(笑)」
3日連続の飲酒は、肝臓だけでなく「体臭」にも深刻な影響を与えます。 アルコールが分解される過程で発生するアセトアルデヒド臭、 いわゆる「二日酔いの臭い」が毛穴からにじみ出ている状態です。
自分では気づきにくいですが、隣に座るキャストは敏感です。 「また来たの?」と顔では笑っていても、鼻では呼吸を止めているかもしれません。
最終日こそ、最高のエチケットを。 体の内側と外側、両方からケアできるアイテムで武装しましょう。
遊びたい気持ちと、お財布事情の戦争
僕の無責任な煽りに対し、 彼の心は激しく揺れ動きました。
「当たり前だよなぁ? 男なら3セットだよなぁ!」
そう言いたげな気配が、文面から伝わってきます。 しかし、現実は非情です。
「気持ちはスタートラスト(開店から閉店まで)で行きたいんだけど…」 「明日は朝から現場対応とかあるから、2セットが限界やな…」 「流石にねぇ? 財布の中身も見てみぬふりはできんし…」
彼の、か細い理性が、必死に抵抗していました。 「明日の仕事」を理由にしていますが、 本当の理由は明らかです。
「金がない」のです。
初日の散財、2日目の延長と王将。 彼のお財布(という名のライフポイント)は、すでに点滅状態。 本当は僕に乗せられて3セット、4セットと行きたいところですが、 物理的に「2セット(80分)」が限界だったのです。
それは、彼がギリギリのところで踏みとどまった「大人の判断」なのか、 それとも単なる「弾切れ」なのか。 おそらく後者でしょう。
こうして彼は、 「2セット一本勝負」という制約(縛りプレイ)を自らに課し、 最後の聖戦へと挑んでいきました。
夢の終焉と、赤ウインナーの悲哀
数時間後。 日付が変わる頃、彼から「退店報告」が届きました。
「終わった…俺の夏が終わった…」
文面からは、完全燃焼した男の「灰」のような虚脱感が漂っています。 最終的に彼は、宣言通り大本命の「みりあちゃん」を指名し、 きっちり2セット(160分)だけ楽しんで帰ったようです。
次の日の仕事のことを考えてなのか、 さすがにお金が尽きたのか。 (おそらく、両方でしょう)
僕は、最後の仕上げとして、彼に一つ質問を投げかけました。
「お疲れさん。最高の夜だったな。 で、最後の晩餐(締め)は何を食べたん? 今日はラーメン?」
昨日の豪快なチャーハン画像のような、 飯テロ報告を期待していた僕に対し、 彼からは予想外の、そして切なすぎる答えが返ってきました。
「昨夜は…何食ったかなぁ…」 「そうだ、店で赤ウインナーばっかり食ってたわ」
……赤ウインナー。 あの、タコさんにもならない、チープで真っ赤な加工肉。
キャバレー花園では、セット料金の中に「乾き物・おつまみ食べ放題」が含まれています。 その中には、スナック菓子だけでなく、 ちょっとしたホットスナック(唐揚げやウインナー)も運ばれてくることがあります。 これらは、どれだけ食べても「追加料金ナシ」です。
ポコさんは、ハッキリとは言いませんでした。 でも、僕には分かります。痛いほどに。
本当は、締めにラーメンが食べたかったはずです。 こってりした豚骨スープで、アルコールを中和したかったはずです。 あるいは、吉野家の牛丼でもよかったかもしれない。
けれど、彼にはもう、 「ラーメン一杯(800円)」を払う余裕すら残っていなかったのです。
限られた予算をすべて「指名料」と「延長料」に回すため、 彼は店内で出される無料の赤ウインナーをひたすら口に運び、 ハイボールで流し込み、空腹を誤魔化していたのです。
ミラーボールの輝きの下、 水着美女の甘い香りに包まれながら、 無料の赤ウインナーで空腹を満たすアラフォー男。
そのあまりに歪(いびつ)なコントラストを想像した時、 僕は笑いよりも先に、胸が締め付けられるような哀愁を感じました。 これぞ、昭和の文豪が描くような「無頼派」の生き様ではないでしょうか。
キャバレー遊びは、夢と現実のバランス感覚が命です。 楽しい時間に没頭するのは良いことですが、 「帰りの電車賃」と「締めのラーメン代」まで使い込んでしまうのは、 大人の遊び方としては赤点です。
遊びに行く時は、あらかじめ 「何があっても絶対に使わない聖域のお金(非常用千円札)」を 財布の隠しポケットや、別の小銭入れに入れておくこと。 その千円が、惨めな思いからあなたを救ってくれます。
未来の自分は、どこかの他人
さらに翌朝。 夢から覚めた現実を知ったポコさんの、 一言が届きました。
「あと、次の日が仕事の時は飲まないのが1番やね」 「(二日酔いで)今朝、起きたくなかった…」
当たり前です。 30代も後半になれば、肝臓の分解能力は落ちています。 それを無視して3連闘したのですから、体からの猛烈な抗議は当然の報いです。
しかし、それでも彼はこう続けました。
「だけど、みりあちゃんのおっぱい見れた!触れた!」 「水着イベント最高!悔いなし!」
二日酔いの頭痛よりも、塩粥生活の恐怖よりも、 「おっぱいを見れた喜び」が勝っている。 その、あまりにも純粋で、動物的な喜びの報告だけが、 彼の3日間の全てを肯定していました。
欲望の収支決算
祭りは終わりました。 ポコさんは、日常という名の戦場へ戻っていきました。
その横で、僕は冷静に、 今回の「伝説の3日間」で彼が消費したであろうリソースを、 勝手に計算してみました。
【ポコさんの水着イベント収支(推定)】
- キャバレー花園代:
- 初日(3セット):約20,000円
- 2日目(3セット):約20,000円
- 最終日(2セット):約15,000円
- 小計:55,000円
- 交通費(電車往復):
- 1,140円 × 3日間 = 3,420円
- 飲食代(締め・コンビニ等):
- 王将、水分補給など = 約4,000円
★合計支出:約62,420円
6万円。 彼の手取り給料と借金残高を天秤にかければ、これは致命傷に近い金額です。 最新のゲーム機が買えるどころか、 名古屋のワンルームの家賃が払えてしまいます。 なにより、彼の借金返済の一部に充てられたはずです。
彼の財布からは大金が消え、 彼の肝臓と腹回りには、大量のアルコールと脂質が蓄積されました。 そして未来の彼には、 「塩粥生活」と「先延ばしにされた借金返済」という、 重い現実がのしかかります。
彼が、その全てと引き換えに手に入れたのは、 一瞬の、泡のような、夢見心地の時間だけ。 スマホに残った数枚の写メと、薄れゆく記憶だけです。
普通の人なら、「バカなことをした」と後悔するでしょう。 「もっと有意義に使えばよかった」と嘆くでしょう。
しかし、彼は違います。 「未来の自分は、どこかの他人」。 今の自分が楽しければ、未来の自分がどれだけ苦労しようが知ったことではない。 この徹底した「刹那主義」こそが、ポコさんの真骨頂なのです。
この三日間で、彼は臆病なピーターパンの皮を完全に脱ぎ捨て、 欲望のままに空を飛ぶ、真の「欲望のピーターパン」として覚醒しました。
あまりにも悲しくて、滑稽で、 そして涙が出るほど人間臭い、伝説の三日間でした。
彼の生き方は極端ですが、 「お金を何に使うか」は人生の価値観そのものです。
モノではなく「体験」にお金を使うことは、 幸福度を高めると心理学的にも言われています。 (彼の場合は度が過ぎていますが…)
自分の欲望の癖を知り、 正しくコントロールしてお金と付き合う。 そのための「お金の教養」や「行動経済学」を学ぶことは、 現代を生き抜く最強の武器になります。 塩粥生活になる前に、一冊読んでおくことをお勧めします。
まとめ:人生の正解とは
彼の、このどうしようもない生き様を、 LINE越しに一番近くで観察できたことは、 僕にとって最高のエンターテインメントでした。
アラフォーのおじさんが、 世間体も将来の不安もかなぐり捨てて、 無邪気に欲望をさらけ出せるということ。 それは見方を変えれば、 「誰よりも人生を謳歌している」とも言えるのではないでしょうか。
その日限りの幸せを得るために、未来の自分を犠牲にする。 普通の感覚であれば、我慢し、貯金し、堅実に生きるところです。 それが「大人の正解」だと教えられてきました。
けれど、明日死ぬとしたら? 「あの日、塩粥覚悟でキャバレーに行ってよかった」と笑えるのは、 間違いなくポコさんの方でしょう。
もちろん、借金はダメですし、人としてどうかと思う部分は多々あります。 でも、この一貫した「刹那主義」を貫ける強さ(鈍感さ)は、 ある種の才能であり、輝きです。
僕は、このまま変わらないポコさんでいてほしいと、 心から願っています。
さて、長く続いた「花園編・水着イベントの乱」もこれにて完結。 しかし、彼の人生という名のジェットコースターは、 まだ止まることを知りません。
次はどんな欲望の扉を開け、どんなトラブルに巻き込まれるのか。 僕の観察日記のページは、まだまだ白紙がたくさん残っています。
それでは、また次のエピソードでお会いしましょう。 ご愛読ありがとうございました。
オススメ記事
▼前回の花園編はこちら(5話)
▼キャバレー花園編・第1話から読む
▼キャバレー花園シリーズはこちら
▼ポコさんのプロフィール










