序章:僕らの中心は「スト4」だった
深夜、安アパートの一室に響き渡る、アーケードスティックの「カチャカチャ!」というけたたましい操作音。
パソコンのモニターには「ニコニコ生放送」のコメントが、弾丸のような速さで流れていく。
当時の僕にとって、世界の中心は「ストリートファイター4」でした。
退屈な仕事を終えて、コンビニ飯もそこそこに配信ボタンを押し、見知らぬ誰かとオンラインで殴り合う日々。
モニターの薄明かりだけが灯る暗い部屋で、缶コーヒーをすする。 日中の「社会人としての僕」とは、まったく別人格の時間がそこにはありました。
勝てば「うおお!」「88888!」とリスナーと一体になって盛り上がり、負ければ「ざまぁwww」「今のミスだろ」とコメント欄が容赦なく荒れる。
その、ヒリヒリするような緊張感と、画面の向こう側と確かに繋がっているという熱狂に、僕は毎晩のように取り憑かれていました。

そんな中、画面の向こうに現れた一人の名前――「ポコ」。
最初は、数多くいるリスナーの一人に過ぎませんでした。
よくコメントをくれる、常連のひとり。 少し間の抜けた、でもどこか憎めないコメントをくれる人。 ただ、それだけ。
目次
体験談:画面越しのライバル、そして「仲間」へ
画面越しの好敵手
けれど、彼もまた、同じゲームの配信者でした。
僕が彼の放送を見に行き、彼が僕の放送に来る。 そんな交流が始まり、自然とオンラインで対戦(通称「生主対決」)するようになりました。
当時のポコさんのプレイは、まだ荒削りだった。 とりあえず開幕バックジャンプ。
距離をとってから安全に攻めると思いきや、起き上がりに無敵技をぶっ放すギャンブルスタイル。
でも、その無骨なプレイの端々に、どこか光るものを持っていました。 常識に囚われない、予測不能な動き。(今思えば、それが「欲望のピーターパン」の片鱗だったのかもしれません)
対戦すれば、僕が圧倒的に勝つことが多かった。
けれど、不思議と彼との対戦は楽しかったのです。
それは、画面の向こうで「くそー!」「なんでや!」とアケコンを叩きつけ、本気で悔しがっている姿が、なぜか目に浮かんだから。
そして彼は、どれだけボコボコにされても、絶対に「次は負けない!」と食い下がってくる。 そのしぶとさが、どこか面白かった。
そのうち、僕らは「ただの配信者とリスナー」ではなく、同じゲームを愛する、かけがえのない「仲間」になっていきました。

名古屋での初対面と「喫茶マウンテン」
やがて僕らの交流は、画面の中だけに収まらなくなりました。
ネットでの出会いがまだ少し珍しかった時代。 僕らは、オフラインで会うことに、ある種の緊張と高揚感を覚えていました。
名古屋・大須で行われていたゲーム大会「名古屋ストリートバトル(NSB)」。 そこにポコさんを含む配信仲間を誘い、僕らはリアルでも顔を合わせることになったのです。
初めて会ったポコさんは、やっぱり想像通りでした。
不器用で、でも人の良さそうな、どこか憎めない大きな男。 「やあやあ、ななかふぇさん」と、ネットでのやり取り通りのキャラクターが登場したのを覚えています。
大会が終われば、年齢も職業も住む場所もバラバラな仲間たちと、大須の商店街を歩き回る。 安いB級グルメ(台湾唐揚げとか)を頬張り、さっきの試合の「あの場面が…」と、ゲラゲラ笑い合う。
時には「喫茶マウンテン」に行くこともありました。 「甘口抹茶小倉スパゲティ」「煮込みおしるこうどん」とかいう、正気の沙汰とは思えない代物を前に、顔を見合わせる僕ら。 あれは、ある種の「通過儀礼」でした。

まるで学生時代に戻ったかのように、僕らは再び青春を謳歌している気分でした。
時にはポコさんや仲間たちが僕の狭いアパートに集まり、雑魚寝していくのも当たり前の光景になっていました。
男数人がポテチとコーラを囲み、朝の4時まで、ただひたすらゲームの話で盛り上がる。
「ゲームが一つあれば、僕らは何時間でも笑える」
あの頃の僕らは、ただ純粋に、そう思えていたのです。
静かな別れ――ゲームの終焉
しかし、どんな熱狂にも、終わりは来ます。
あれほど夢中になったストリートファイター4の時代が終わり、続編である「5」へと世代交代が始まったのです。
ゲームが変われば、人も離れる。
堅実なゲーム性に変わりシステムも大幅に変更され、僕自身が熱を失っていったこともあり、あれほど共通の話題で盛り上がっていた僕らは、自然と集まる機会を減らしていきました。
「最近、ななかふぇさん、ログインしてないね」 「ポコさんも、なんか別ゲーやってるみたいよ」
さらに僕自身の仕事の環境の変化や、引っ越しも重なり、二人の距離は少しずつ、しかし確実に遠ざかっていったのです。
最後に話したのは、いつだったか。
喧嘩をしたわけでもない。 嫌いになったわけでもない。
ただ、あれだけ僕らを繋ぎ止めていた「熱狂」という名の時間が、僕たちを違う場所へ運んでいっただけでした。
それはまるで、熱いお風呂のお湯が、ゆっくりと栓から抜けて冷めていくような、静かで、どうしようもない「別れ」でした。
ゲームが終わると人間関係も静かに終わるんだなと当たり前な事に気が付きました。
教訓:人生を変える「偶然」の価値
ななかふぇ 今思い返しても、「人生って不思議だな」と思います。
たった一つの趣味や遊びが、人との出会いや、その後の未来を大きく変えることがある。
もしあの時、僕がスト4にハマっていなかったら。 もしあの時、ニコ生配信のボタンを押していなかったら。
ポコさんと出会うことは、未来永劫なかったでしょう。 そしてもちろん、この「欲望のピーターパン」というブログが生まれることも、絶対にあり得ませんでした。
あなたにもきっと、そんな「偶然から始まる物語」があるんじゃないでしょうか?
もし今それが目の前にあるなら、ぜひ大切にしてほしい。
その偶然が、数年後、あなたの人生にとって、かけがえのない「反面教師」であり「最高のエンターテイナー」を連れてきてくれるかもしれませんからね(笑)
まとめ:再び始まる物語の予兆
これが、僕とポコさんの出会いの物語。
ニコ生の画面越しの好敵手から始まり、リアルの友人となり、そして一度は離れていった。
一つのゲームが繋いだ、ありがちで、しかし僕にとっては特別な「青春」の記憶です。
でも、この物語はここで終わりじゃありません。
これで「めでたしめでたし」なら、このブログは始まってすらいない。
数年の時を経て、この「ただのゲーム仲間」だった男は、僕の人生をかき乱す「とんでもないモンスター」として、再び僕の前に現れることになります。
そこで始まるのが、あの「欲望のピーターパン」という物語の、真の序章だったのです。
その話は、また次の機会に語ることにしましょう。
「人生って不思議だな」と思います。
たった一つの趣味や遊びが、人との出会いや未来を大きく変えることがある。
あなたにもきっと、そんな「偶然から始まる物語」があるんじゃないでしょうか?
もし今それが目の前にあるなら、ぜひ大切にしてほしいです。
▼ポコさんの「今」を知る(プロフィール)
▼二人の再会、そして「伝説」の始まり(キャンプ編1話)


