はじめに:再会の狼煙(のろし)は、BBQ
僕の人生における最高のエンターテイナーであり、最恐の反面教師でもある男、ポコさん。
かつて「ストリートファイター4」というゲームの熱狂の中で出会い、そして熱が冷めると共に、少しだけ距離ができていた友人。
▼僕とポコさんの出会い(原点)はコチラ
そんなある日、僕はふとアウトドアに興味を持ち始めていました。
「画面の中の戦いもいいけど、たまには太陽の下でのんびり肉でも焼きたい」
そう、目的は「のんびり」です。 心穏やかな休日を過ごしたかった。
そこで、再会のきっかけとして、あのポコさんを誘ってみたのです。
我ながら、なぜ「のんびりしたい」という目的と「ポコさん」という存在を安易に結びつけてしまったのか。 今となっては、自分を小一時間問い詰めたい気分です。
僕が立てた計画は、完璧なはずでした。 その名も「手ぶらでバーベキュー作戦」。
場所は愛知牧場。 あそこなら、コンロも網も炭も食材も、ぜんぶ揃っている。
これなら、あの究極の面倒くさがり屋であるポコさんでも、手ぶらで来て肉を食って帰るだけ。 「さすが俺、計画が完璧だ」と自負していました。
――しかし、僕はまだ知らなかった。 道具より、よっぽど面倒くさい「人間そのもの」が、ポコさんだということを。
目次
体験談:ポコさん流「俺流キャンプ」伝説の幕開け
立ちはだかる「木炭」という名の壁
舞台は、東郷町にある愛知牧場。 五月晴れの空の下、僕とポコさん、そしてもう一人の友人(巻き込まれた被害者)の三人は、すべてが整ったバーベキューサイトに腰を下ろしました。
目の前には、見るからに美味しそうな肉と、色とりどりの野菜。 クーラーボックスには、キンキンに冷えた(設定の)ビール。
「いやー、最高だね!」 「手ぶらBBQ、楽でいいわー」
しかし、コンロの中には、黒々とした木炭が、まるで「かかってこいよ」とでも言いたげに鎮座しています。
……そう。 僕らは、その存在を当たり前のものとして受け入れすぎていました。
最後の関門「火起こし」のことを、完全に忘れていたのです。
「……これ、どうやって火をつけるんだろう?」
一人が呟くと、場の空気が一瞬で凍りつきました。 顔を見合わせる、アラフォー男子三人。 誰も、分からない。
スマホで調べるという、現代人として当たり前の行動すら思い浮かばないほど、僕らは目の前の「炭」という原始的な壁に圧倒されていました。
このままでは、肉を生でかじるか、愛知牧場のヤギに「この肉食う?」と分け与える未来しか待っていません。
その時、一人の男が静かに立ち上がりました。 そう、ポコさんです。
「じゃあ、俺が火起こしやるからね」
その自信に満ち溢れた、張りのある力強い言葉。 まるで、この事態をすべて見越していたかのような、頼れる男の第一声。
僕も友人も、心の底から感心しました。 「おお、ポコさん、いつの間にそんなスキルを…」 「こういう時に意外と頼れる男なんだ」と。
久々に見た、彼の頼もしい大きな背中。 ――この時は、本気でそう信じて疑いませんでした。
衝撃!着火剤を「直塗り」する男
ポコさんは、バーベキューセットに付いてきた「ゼリー状の着火剤」を取り出しました。 ピンク色の、見るからに化学的な物体です。
そして、次の瞬間。
僕と友人は、我が目を疑う、信じられない光景を目撃することになります。
ポコさん、何を思ったか、おもむろにその着火剤の袋を「ビリッ」と破り、中身のピンク色のゼリーを、その手に(!)直接出そうと…いや、さすがにそれは思いとどまったようです。
彼は、炭の一つひとつに、まるでパティシエがケーキに生クリームをデコレーションするかのように、丁寧に、それはもう丹精込めて、塗りたくり始めたのです。
僕と友人は、顔を見合わせました。 (え、あれで合ってるの?) (いや、でも、あんなに自信満々にやってるし…) (俺らも知らないし、ああいうやり方なのかも…)
彼のあまりに手際が良く、一切の迷いがない「俺流」の作業っぷり。 その真剣な眼差し。 まるで「俺は今、人類の誰もが辿り着けなかった、火起こしの最適解を実践している」とでも言いたげなドヤ顔です。
無知とは恐ろしいもので、僕と友人は、その斬新すぎる火起こし術に、思わず感心してしまったのです。
「へぇ〜、そうやって火をつけるんだ…」
僕は素直に感心をしていました。
ポコさんは、コンロの中のすべての炭にピンク色のゼリーを均等に塗り終えると、「ふぅ」と一息つき、満足げにライターで火をつけました。
「ボッ!!」
一瞬、勢いよく炎が立ち上がりました。 ピンク色のゼリーが、派手な音を立てて燃え上がります。
「おお!すごい!ついた!」
僕らが拍手しかけた、その刹那。
炎は、表面の着火剤だけをキレイに舐め尽くすと、まるで「ごちそうさま」とでも言うかのように、静かに消え去りました。
後に残ったのは、表面が少しテカテカになっただけで、相変わらず黒いまま沈黙を守る、無傷の炭たち。
「あれ?おかしいなぁ。これで火がつくと思ったんだけど…」
ライターを片手に、本気で首をかしげるポコさん。 その顔には「なぜだ」と書いてあります。
――彼の「俺流キャンプ」伝説は、この見事なまでの大失敗から、高らかに幕を開けたのです。
そして誕生、清々しすぎる「逆ギレ」
「だめだ、ラチがあかない!」 「このままじゃ日が暮れる!」
結局、僕が受付まで全力ダッシュで走り、ゼーゼー息を切らしながら、BBQのスタッフさんに正しい火の起こし方を聞いてきました。
「あの、炭に火がつかないんですけど…」
「ああ、木炭の下に、着火剤を袋ごと置いて、その上に炭を井桁に組んで燃やしてくださいね」
あまりにもシンプルすぎる、正論。 そして「袋ごと」という衝撃の事実。
崩れ落ちそうになる膝を叱咤し、僕はサイトに戻りました。
息を切らしてポコさんにその事実を伝え、僕は、あの時からずっと胸につかえていた、最大の疑問をぶつけました。
「ポコさん、なんで袋を破って、炭に直塗りしたの?」 「普通、袋のまま置くとか、炭の下に置くとか思わなかったの?」
すると彼は、少しムッとした表情で。 いや、明らかに「なんでそんなことを聞くんだ」という不満げな顔で、僕に向かってこう言い放ったのです。
「だって、知らなかったからしょうがないじゃん!!」
まさかの、逆ギレ。
「俺は知らなかった。知らなかった俺が、どうやって正しい方法を思いつくんだ」と。 「知らないんだから、この失敗は不可抗力だ」と。
この思考回路、まさに「欲望のピーターパン」の真骨頂です。 「知らない=学ぶ」ではなく、「知らない=悪くない(むしろ俺は被害者だ)」という、常人には理解しがたいロジックで、彼は自らの過ちを完璧に正当化したのです。
その、あまりの理不尽さと、清々しいまでの「俺は悪くない」という開き直り。
怒りを通り越し、僕と友人は、もう笑うしかありませんでした。 腹を抱えて、「あーっはっはっは!」と。
――そうだ。忘れていた。 理屈や常識が通用する相手じゃなかった。 これが、僕の愛すべき親友、ポコさんなのだ、と。
その後は、僕が起こした火で無事に肉も食べ、食後は腹ごなしにパターゴルフに興じ、ヤギに餌やりも楽しみました。
愛知牧場は、とても素晴らしい場所でした。
けれど、僕の記憶に最も強く、鮮明に焼き付いているのは、あの高級肉の味でも、パターゴルフの奇跡的なホールインワン(嘘)でもなく。
あの、五月晴れの青空に響き渡った、ポコさんの清々しい「逆ギレ」の声だったのです。
教訓:知らないことは「逆ギレ」で解決する(するな)
ポコさんは、やっぱりすごい。 色々な意味で。
普通、僕たち凡人は、知らないことがあれば、まずスマホで調べるじゃないですか。「恥をかきたくない」からです。 「BBQ 火起こし 簡単」とか、「着火剤 使い方」とか。
でも、彼は調べない。「恥」という概念が、彼の欲望の前には存在しないからです。
己のインスピレーションと「たぶんこうだろう」という根拠なき感覚(=俺流)を、何よりも信じて、自信満々に実行する。
そして、見事に失敗する。
挙げ句の果てに、「知らなかったからしょうがない」と、逆ギレでその場を制圧しようとする。
でも、不思議と憎めない。 それどころか、その場にいた全員の、忘れられない「最強の笑い話」という思い出を、根こそぎかっさらっていく。
彼の生き様は、僕たち凡人に一つの教訓を与えてくれます。
「完璧な準備なんて、いらない。失敗したって、笑い飛ばせば(逆ギレすれば)いい」
もちろん、「火起こしはポコさんに任せてはいけない」という、非常に実用的な教訓も得ましたが(笑)
ポコさん対策本部:あの悲劇を防ぐ「文明の利器」3選
あの時、ポコさんが逆ギレせずに済む(?)アイテムがありました。 これからBBQを始める初心者の人、そしてポコさんのような「俺流」の友人がいる人は、絶対に持っていくべきです。
1.火起こしは「文明の利器」に頼るべし(固形着火剤)
ポコさんのように直塗り(という奇行)をしなくても、炭の下に置いて火をつけるだけで、あとは勝手に燃え続けてくれる「固形着火剤」。 文化的にBBQをするなら、もはや常識です。 これがあれば、100%火はつきます。頼むからこれを使ってくれ。
2.意外と楽しい火吹き棒
ぶっちゃけ、今の僕ならこれ一択です。 息を吹きかけるだけで炎が蘇る“火起こしの相棒”。
小さくても侮れない、燃焼効率アップの秘密兵器!
ただし夢中になりすぎて酸欠にならないように注意(笑)
3.ポコさん対策の最終兵器「耐火グローブ」
ゼリーを直塗りしようとしたポコさんです。 次は、燃え盛る炭を「素手で」動かしかねません。 「熱いからしょうがないじゃん!」という逆ギレを防ぐためにも、BBQには耐火グローブが必須です。 安全第一。
まとめ:伝説の始まり
こうして、ポコさんとの再会は、笑いと煙と理不尽に包まれて幕を閉じました。
そして、これが「欲望のピーターパン」ポコさんの、「俺流キャンプ」伝説の序章となったのです。
この日、僕は確信しました。 「こいつを観察し続けたら、とんでもないブログ記事が書けるぞ」と。
この後、彼がさらに大きな「しくじり」を次々と連発し、僕のブログのネタ帳がパンク寸前になることを、この時の僕はまだ知る由もありませんでした。
次回、ポコさんの「俺流」がさらに加速する――。 彼の物語は、まだ始まったばかりです。
▼愛知牧場のかわいい動物達




ななかふぇ 今回のポコさんの「しくじり」。
腹を抱えて笑っていただけたでしょうか。
僕たちは、つい「完璧」を目指してしまいます。
失敗しないように。 恥をかかないようにと、慎重になりすぎる。
でも、何年経っても鮮明に覚えているのって、完璧に成功したことより、こういう「どうしようもない失敗」だったりしませんか?
ポコさんは、僕たちに 「失敗しても、まぁ死なないし、むしろ面白いよ」 ということを、身をもって教えてくれます。
あなたの人生にも、愛すべき「しくじり」がありますように。
それこそが、あなただけの最高の物語になるはずですから。
▼ポコさんの「すべて」を知る(プロフィール)
▼次のキャンプ失敗談(第2話)はこちら









