はじめに:懲りない男の、新たなる夢
僕の親友、ポコさんは、一度や二度の失敗では決して心が折れない男だ。
初めての宿泊キャンプでタープ泊に挑戦し、夜中にタープを崩壊させた事件はまだ記憶に新しい。
▼前回のエピソード
だが彼は懲りるどころか、次なるキャンプの夢を見つけ出した。
そう――「ハンモック泊」である。
「次は、ハンモックで泊まりたい!」
再び僕の不安をよそに、彼の「俺流キャンプ伝説」の新しい幕が上がった。
忠告を無視!自立式ハンモックと無謀な計画
僕たちがよく利用する豊田市にあるキャンプ場、「アウトドアガーデンいなぶ」には、ハンモックを吊るすのにちょうど良い木がありません。
アウトドアガーデンいなぶ
【HP】https://www.oinabu.net/
【GoogleMap】https://maps.app.goo.gl/bkgBAp2QuGg6kFZU8
いつものキャンプ地「アウトドアガーデンいなぶ」には、ハンモックを吊るせる木がない。
そこで彼が見つけたのが自立式ハンモックスタンド。
「これで場所を選ばずに泊まれる」と得意げに語る姿に、僕は少しだけ感心した。
▼これが悲劇の始まりとなった自立式ハンモック(耐荷重200キロ)


そして運命の日、ゴールデンウィークの真っ只中。 昼間はぽかぽか陽気ですが、山の夜は容赦なく牙をむきます。
夜の寒さを身をもって知っていた僕は、何度も何度もポコさんに忠告しました。
「昼は暑いけれど、夜になるとめちゃくちゃ寒いから、ちゃんと寒さ対策しないとダメだよ」と。
しかし、彼の耳にはその言葉は届きません。 彼は楽観主義という名の最強の盾を構え、
「大丈夫、大丈夫。何とかなるでしょ」と、全ての警告を弾き返してしまいました。
彼がその夜のために用意したのは、たった一枚の、心もとない毛布だけでした。
僕は心の中でこう思いました。
(これだけ言っても聞かないのなら自己責任だな。それに…彼が夜通し凍える姿を想像すると、ちょっと面白いかもw)と。
その少し意地悪な期待を胸に、僕は万全の装備で暖かい眠りについたのでした。
▼天然のプラネタリウム

山の夜は甘くない。凍える夜と後悔の背中
翌朝。
パチパチと薪がはぜる音と、香ばしい煙の匂いで僕は目を覚ましました。
寝ぼけながらテントの外に出ると、そこには僕の期待を裏切らない光景が広がっていました。
焚き火の前で小さく丸まって、必死に暖を取る、しょんぼりとしたポコさんの大きな背中…。
僕は彼に声をかけました。 「昨日は寒かったでしょう?」
すると、彼は力なく顔を上げ、期待通りの100点満点の返答をしてくれたのです。
「寒くて、一睡もできなかった…。ななかふぇさんの言う通りにすれば、よかった…」
【結末】愚者は経験から逃げ出した
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」という言葉があります。
僕もポコさんも、間違いなく後者の「愚者」です。
体で痛みを感じないと学ばない生き物なのです。僕も彼と同じようにたくさんの失敗を経験してきたから、彼のことは笑えません。
しかし、彼のすごいところはここからです。あれだけ憧れていたハンモック泊。
たった一度の失敗で、彼の心は完全に折れてしまいました。
彼は家に帰るなり、すぐにハンモックとスタンドを売却してしまったというのです。
彼は「経験」から学んだのではありません。ただ、「痛い」から逃げ出しただけなのです。
後日談
後日、ポコさんに冗談でこう言ってみました。
「ハンモックで寒かったら、下から焚き火をしたら暖かくなるんじゃないか?」と。
すると彼は、「炙りチャーシューになるやろがい!」と、ノリノリで返してきました。
自分のしくじりすらも、こうやって笑い話に変えてしまう。彼のその、どうしようもない明るさだけは、尊敬できるのかもしれませんね(笑)。
ポコさんは、自分の失敗を笑い話に変える天才です(本人は狙ってないので才能でもあります)。凍えて眠れなかった夜ですら、翌日には「ネタ」として披露できる。これは彼のどうしようもなさであり、同時に大きな強みでもあります。
読者のみなさん。人生で失敗や後悔はつきものですが、それをただ避けるのではなく、「笑い」に変える余裕を持てたら、きっと前向きに進めるはずです。大事なのは、失敗から逃げることではなく、そこにユーモアと学びを見いだす力。ポコさんを笑いながら眺めつつ、僕もまた、そうありたいと思っています。
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