今回の主人公は『ななかふぇ』です。初めての横浜中華街に胸を躍らせ、異国情緒あふれる街並みにワクワクしながら歩き出す姿を思い浮かべてください。
前回の「nacoco横浜ベイホールライブ」の次の日のお話です。
僕は中華街を一人で遊びに行くのは初めてだったのでとても新鮮な気分で散策していました。どこに行っても「占い」や「中華料理食べ放題」「開運グッズ」「食べ歩きのお店」など、同じようなお店と雰囲気ばかりで、僕は道に迷いながらも楽しんでいました。
目次
第一幕:『賢者』、恐怖の扉の前に立つ
ふと、目に留まった大きなお店がありました。「横浜大世界」という大きなお店です。看板をみると『ベルサイユのばらアートリック』の文字が。
現在「ベルサイユのばら」の世界にはまっていたので、これは行くしかないと決心しました。
どうやら、ベルサイユのばらのアートリックが展示されているそうな。僕は「オスカル様」に会いに行くために入場をしたのでした。
受付に行き、1500円払い、そのまま8階のエレベーターに案内されて乗りました。どうやら、8階から順番に降りていくシステムのようでした。
エレベーターが開いてすぐに目に入ったのは有名な「ルビンの壺」でした。ただのイラストではなく、実際の壺をルビンの壺にしたものです。「なるほど、面白いな」と冷静に分析していた。そう、あの扉が現れるまでは……。
第二幕:葛藤するおじさん
一通りアートリックを見終わったあとに、なんだか怖そうな看板が現れました。
『ホラーアートリックコーナー』
その不吉な文字を前に、彼の足はピタリと止まった。

(おいおい、ホラーとか聞いてないぞ…)
何を隠そう僕はホラー系がとても苦手なのです。一人で夜道を歩くのは平気なんですが、アトラクションで驚かされたりびっくりさせられるのが大の苦手なのです。
心の中で二人の自分が激しく議論を始める。
- 賢者のななかふぇ:「行くべきや!やらん後悔より、やった後悔やで。全部の経験は未来の糧や!自分でいつも言ってるやろ?何事も挑戦しろって!」
- 正直なななかふぇ:「いやいやいや!それとこれは別やて!100%怖いってわかってて飛び込むアホどこにおるんじゃい!?わしちゃうわ!」
10分間にも及ぶ天人交戦の末、突然エレベーターが開いた。5人の女子大生と思われるグループが入ってきた。
ここでななかふぇに天啓が降りてくる!彼が導き出した答えは――「女子グループの後ろについて後から隠れて進む」という、なんとも情けなく、あまりにも人間臭い作戦だった。
第三幕:一人、地獄の最前線へ
女子グループがゆっくりとアートを眺めている間、一人のおじさんもゆっくりと腕を組んでアートを真剣に眺めていた。
(早く先に行かないかな…)
そんなことを考えながら、ななかふぇは女子大生のグループを横目で観察していたその時。エレベーターが新たに開いて二人組のカップルが入場してきた。そのまま、流れるようにアートをみて、すぐにホラーアートトリックコーナーに入っていった。
それを横目で見ていた僕。カップルが入って10秒たったその瞬間!
「ウワーーー!!!」
と、断末魔のような悲鳴と爆音が聞こえてきました。
(えっ!! 入ってすぐ!? そんなに怖いの!!?)
ななかふぇは再び心が揺れた。スマートフォンで検索をする
【迷った時の名言 10選】 【後悔しない生き方 5選】
これらを読んで自分を鼓舞しようとした。
葛藤しまくっている最中に、女子大生グループがホラーアートトリックコーナーに入っていった。そして、すぐに女子グループの断末魔のような悲鳴が聞こえてきた。恐怖が倍増したが、後には引けなくなったななかふぇは第一の恐怖部屋へ足を踏み入れる。
壁に飾られた美しい女性の絵画。そこには「目を合わせてください」との指示が。
次の瞬間――
ギャーーッ!
おぞましい姿に豹変した女が轟音と共に飛び出してきた!
「うおおおおおお!怖いとわかっていても怖い!!!!」
半泣きになりながらも、彼は次の部屋へ進むしかなかった。次々と現れる恐怖のアートトリック。女子大生グループが怖がったあとに体験をするが、それでも十分に怖いものばかりであった。
次の部屋に進んで行くとまさかのアクシデントが発生する。前を歩いていた女子グループが一つのコーナーで詰まってしまったのだ。
5人で順番に一つのホラーを楽しんでいるので後ろで待つしかなかったのだが、ななかふぇは、(おじさんが後ろで待っていたら、この人たちにとって気持ち悪いだろうな。僕がある意味ホラーになっちゃうよねw)と彼女たちを追い越してしまう。この選択はこのあと大きく後悔する結果になってしまう。――彼は地獄の最前線に立たされることになったのだ。
第四幕:『無理無理無理!』と『ありがとう…』
女子グループの断末魔が遠くから何度も聞こえ、廊下の薄暗さと不気味な静寂が一層濃くなっていく。足音や心臓の鼓動まで大きく感じられるほど恐怖が高まる中、ななかふぇは次の瞬間何が起こるのかと息を詰めていた。
先頭に誰もいない。後ろには女子グループ。逃げ場のない一本道を進むななかふぇ。恐怖を押し殺し次の部屋に侵入した。
すると、額縁に女性の絵画が飾ってある。足元をみると「ここに立ってください」との指示がある。無視して通り過ぎようと思ったが、女子大生が後ろから見ているのがわかった。僕は覚悟を決めて指定された場所に立った。すると、絵画の女性がゆっくりと動き始めて突然コチラに飛び出そうとしてきた!コチラにむかってこぶしを何度も叩きつける絵画の女性。音と同時にガタガタと激しく揺れる額縁!
「無理!無理!無理!無理ぃぃぃ!」
46歳の賢者の悲痛な叫びが、中華街にこだましたとか、しなかったとか…。
情けない声をあげながら最後の部屋と思われる場所に到着する。中をのぞいてみると中央に鎮座する一体のフランス人形。それだけで十分怖い。入るか入らないか迷っているとフランス人形がコチラをゆっくり向いた。(うおおおおおおおお!!!怖いいいいいい!)ななかふぇは早くこの場所から立ち去りたかった。気づかれないようにそーっと通り抜けようとした瞬間――
耳元で、少女のか細い声が響いた。
「ありがとう……」
その声と共に、人形の首がゆっくりとこちらの動きに合わせて顔を向けていた。
(うおおお!どんな仕掛けなんだよ!!!怖すぎる!!!!)
エピローグ:そして、彼は『物語』を手に入れた
やっとの思いで部屋を出たななかふぇは後悔した。「やっぱり入らなければよかった…」と。ホラーアートリックを出たあとも恐怖が尾を引き、他のアートリックも、目的だった「ベルサイユのばら」アートリックも十分に楽しめなかった。
入ってよかったのか、入らなければよかったのか。その時はめちゃくちゃ後悔した。でも今は入って良かったと思っている。
そう。彼は恐怖と引き換えに、最高の『物語』を手に入れたのだから。
彼の人生の映画に、また一つ最高のワンシーンが刻まれた瞬間であった。
怖さの先には「笑い話」というご褒美が待っています。人は不安や恐怖を避けたがるものですが、時にその一歩を踏み出すことで、後々まで語れる大切な経験になる。だからこそ、恐怖に震える時間さえも人生のスパイスにできるんです。例えばホラーアトラクションや人前で話すこと、新しい職場への挑戦など、あなたにとっての「挑戦すべき怖い扉」はどこにありますか?苦手なものに挑戦する勇気は人生において唯一無二の経験値になりドラマが生まれます。
ベルばらの部屋リターンズのアートリック



